シーケンス制御講座

自己保持

自己保持について詳しく解説します。自己保持は自分のコイルを自分の接点でONさせる回路で、シーケンス制御の基本であり、ラダー図の基本でもあります。シーケンス制御講座の動画で人気の自己保持を記事にしています。自己保持のことしか解説していませんが、仕組みを詳しく解説しています。

作成日:2023年1月10日
更新日:2023年1月10日


自己保持とは

自己保持というのはリレーを使って、そのリレーのコイルをそのリレーの接点でON状態を維持する回路です。リレーというのはコイルと接点で構成された機器で、コイルに電流を流すと電磁石となりリレーの接点を引き付けて、接点をONさせます。リレーについては別の記事「リレーについて」で詳しく解説していますので、リレーが分からない方はまずリレーについて理解をしてみてください。

なぜ自己保持が重要なのかというと、シーケンス制御を学習されている方のほとんどが最終的にはラダー図にたどり着くと思います。ラダー図を理解したい。だからシーケンス制御を学習している方も多いと思います。このラダー図でよく使われているのが自己保持です。自己保持を理解できないままラダー図を理解することは困難です。そこでこの記事では自己保持だけを解説しています。Youtubeでも動画で解説していますので、詳しく知りたい方は動画でもご視聴ください。

自己保持の流れ

自己保持がどのような流れで実行されているのか、細かく見ていきましょう。

上記のような回路があります。「CR1」というのがリレーです。同じ「CR1」のコイルと接点を使っています。押しボタンというのは押しボタンスイッチで、自己保持を実行するためのものです。切というのは自己保持を解除するためのスイッチでb接点で接続しています。

では電源を投入して電流がどのように流れているかイメージしてみます

電源のプラス側を赤色にしています。色がついている線が電圧がかかっている線になります。この状態ではスイッチやリレーの接点がONしていないので、電流は流れてはいません。細かい話になりますが、上記の状態は電圧はかかっていますが電流は流れていない状態です。途中まで電流が流れているというわけでもありません。電流というのは回路がプラス側からマイナス側に接続されないと流れません。
この状態で押しボタンスイッチをONします。


すると電流は押しボタンスイッチの接点を通って「CR1」のコイルに流れます。

コイルに電流が流れると「CR1」のコイルはONします。すると「CR1」の接点も動作してON状態になります。

「CR1」の接点がONすれば、「CR1」の接点にも電流が流れます。

この時「CR1」のコイルには押しボタンスイッチと「CR1」接点の両方から電流が流れます。ラダー図上で電流値のことを考える必要はありませんが、少し電気的な話をすると、押しボタンスイッチと「CR1」接点の両方から電流が流れるといっても、電流値が2倍流れるわけではありません。「CR1」のコイルに流れる電流というのは「CR1」のコイル抵抗によって決まっています。そのため電流が押しボタンスイッチの1箇所から流れても、その他の接点を使って複数個所から流れても「CR1」のコイルに流れる電流は一定です。上記の場合、スイッチやリレーの接点抵抗を無視すれば、押しボタンスイッチと「CR1」接点の両方に、半分ずつ電流が流れることになります。これは電気的な話なので、実際にラダー図を書くときはこのようなことは気にする必要はありませんが。

「CR1」の接点がONするので、ランプも点灯します。

ではこの状態で押しボタンスイッチをOFFにします。

するとこのように押しボタンスイッチをOFFにしても、「CR1」の接点から「CR1」のコイルに電流が流れているため、「CR1」はON状態を維持します。これが自己保持の状態です。「CR1」が自身のコイルを自身の接点でONしている状態です。全体の流れは、押しボタンスイッチを一度押せば、「CR1」はON状態となり、その後押しボタンスイッチを放しても(OFFにしても)、「CR1」はON状態を維持することになります。この回路では、スイッチを押せばランプが点灯し、スイッチを放してもランプは点灯し続けることになります。これが自己保持です。

では自己保持を解除(切る)にはどうすればいいでしょうか?自己保持は自身の接点から自身のコイルに電流を供給している状態です。このコイルに流れる電流を遮断すれば自己保持は解除できます。そのためこの回路にはあらかじめ「切スイッチ」が入っています。切スイッチはb接点で接続されているので、スイッチを押せば接点はOFF(遮断)されます。

このように切スイッチはb接点なので、押せばOFFします。

切スイッチを押すことで「CR1」のコイルとの回路が遮断され、「CR1」のコイルへの電流供給がなくなります。すると「CR1」のコイルはOFFします。

「CR1」のコイルがOFFするということは「CR1」の接点もOFFします。

「CR1」の接点がOFFすれば、その接点を流れていた電流も遮断されます。

「CR1」の接点を流れていた電流が遮断されれば、その接点を通って「CR1」のコイルへの電流供給も遮断されます。これが自己保持の解除方法です。自己保持を解除するには、とにかく自己保持を行っているコイルへの電流を遮断してOFFさせることです。

自己保持も解除されたので、ランプへの電流も遮断されランプも消灯します。これが自己保持から自己保持解除までの一連の流れとなります。

これが自己保持の仕組みです。今回はリレーで行う想定で解説しましたが、自己保持はラダー図でも頻繁に使います。もちろんプログラムなので自己保持を使わずに作ることも可能です。ですがラダー図というのは基本的に誰が見ても分かるように書くことが大切です。ラダー図の書き方などは別に記事で解説していますが、自己保持はラダー図にとって必須の技術なのです。(自己保持を使った回路作成が一般的なので)


ラダー図

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