シーケンス制御講座

PIDとは

使う機会が少ないかもしれないPID。しかし必要なときに使えば、とても便利な機能です。PIDを動かす最低限の方法を紹介します。

作成日:2016年05月10日
更新日:2022年10月26日


PIDについて

PIDとはフィードバック制御の一種で、ネットや参考書などで調べるととても難しいことが書いています。微分積分の公式がでてきた時点であきらめたくなります。シーケンス制御の参考書の中には最初からフィードバック制御の説明を詳しくしているものも見かけますが、最初からこのような説明をされると心が折れそうになります。しかしフィードバック制御ができなくてもシーケンス制御はできますのでご安心を。

ではPLCのプログラム上でPID制御を行うには難しい公式を理解しないとできないのでしょうか?実はこんな公式理解しなくてもポイントさえつかめば簡単に利用できます。考え方はフィードバックさせるプログラムを作るのではなく、フィードバックさせる命令を使うのです。もっと適当に説明すると、難しいことはPLCが勝手に行ってくれます。プログラム上で「動作しなさい」と命令するだけです。

ものすごく簡単に書いてしまいましたが、基礎は必要です。まずは最低限の説明です。

PID制御は、目標値を設定して出力を自動で調整して目標値に近づける制御です。例えば車の運転で、時速60kmで走行しようとします。車を発進させて60kmになるまではアクセルを踏み続けます。60kmになるとアクセルを緩め一定の踏み込み量で60kmを維持しようとします。このアクセル操作自体がPIDなのです。さらに細かく言うと、60kmに早く近づけるには、車速が低いときはアクセルを多く踏み込みます。60kmに近づくと少しずつアクセルを緩めていきます。そのまま踏み込み続けると60kmを超えてしまうからです。このように速度に応じたアクセル操作(踏み込む量)もPIDは自動で行ってくれるのです。

これから説明するPIDの説明で注意してもらいたいのですが、基本は車のアクセル操作です。ブレーキという速度を急激に低下させるものや、バックのようなマイナス方向は考えないでください。アクセルを放すと車速は下がってきます。この下がり方は車によって違います。PIDの制御対象も同じで、出力を遮断すると徐々に値が下がってきます。例えば温度をPID制御する場合、出力を遮断すると温度は徐々に下がります。
何が言いたいのかというと、このPIDでモーターを回転させると過程します。JOG運転などで回転させ、操作量(アクセルを踏む量)でモーターの回転数が変化するとします。モーターの回転数に対してPID制御はできます。車の速度と同じです。ではモーターの回転角度に対してはどうでしょう。180°回転させた位置で出力を切っても元の0°には戻りません。同じ回転方向に対して回転していくだけです。昔のテレビのボリュームのように、回転すれば出力が上がるものにこのモーターを組み合わせても、出力が上がっていくだけで下げることができなくなります。このように制御対象によっては考え方が全く変わってきますので注意が必要です。

PIDとは

PIDとは
P:Proportinal(比例)
I:Integral(積分)
D:Differential(微分)
で構成されています。ここではものすごく簡単に説明します。詳しく知りたい方は、「PID」でネット検索して下さい。 最初に用語の説明です。先ほど説明した車での速度調整を例にします。まずアクセルを踏む量は「操作量」となります。 次に車速で、現在10kmで走行しているとします。目標速度が60kmとすると、この差の50kmが「偏差」となります。

Pは比例制御とよばれ、偏差が大きくなるほど操作量が大きくなります。車速と目標速度の差が大きいと、アクセルを踏む量が多くなるということです。偏差と操作量が比例しますので、目標値に早く近づけることになります。ただしこの比例制御だけでは問題があり、偏差が小さくなると操作量も小さくなり最終的に目標値に到達できません。

そこでIの積分制御の出番です。Pだけでは最終的に目標値に到達できません。このわずかな偏差を残留偏差とよびますが、この残留偏差をなくすのがIの役目です。PとIを組み合わせてPI制御と呼びます。

最後にDです。微分制御ですが、これは外乱に対して行う制御です。車の運転の場合、坂道などでは少し多くアクセルを踏む(操作量を増やす)ということです。この3つを合わせてPID制御と呼びます。とても簡単に解説しましたが、イメージだけ分かれば十分です。難しいことはPLCが自動で制御してくれます。

完全微分と不完全微分

また難しい言葉がでてきました。完全微分は理想PIDともよばれ「理論上正しい」という数式で構成されます。しかし実際にPID制御を行うと色々な外乱が入ってきます。D制御で外乱の処理を行いますが、実際はノイズなどのパルス信号も入ってきます。このノイズなどに反応すると、PID制御そのものが不安定になります。
このような場合、不完全微分が使用されます。実用PIDともよばれ、実際に使用するにはこちらのほうがいいでしょう。不完全微分はDの動作の入力に対して一次遅れフィルターをいれたものです。簡単にいうと、一定以上の入力以外は無視します。一定以上といっても短いのですが、パルスなどのようなノイズ信号は無視します。

不完全微分という名前だけあって、中途半端なイメージですが実際は不完全微分を使用してください。名前だけ聞くと完全微分を使用したいものですが・・・。

簡単な説明はここまでで、実際に動かして見ましょう。

PID制御

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