シーケンス制御講座

アナンシェータとは

シーケンス制御講座 中級編 アナンシェータとは

三菱PLCのQCPUにはアナンシェータという特殊なリレーがあります。これは設備の異常回路などに使うと便利なリレーです。アナンシェータは普通の内部リレーのように使うこともできますし、アナンシェータの機能を使えば、何番のアナンシェータリレーがONしているのか等、簡単に調べることもできます。

作成日:2023年08月12日
更新日:2023年08月12日


アナンシェータとは

アナンシェータは,ユーザで作成の設備の異常・故障検出用のプログラムに使用すると便利な内部リレーです。これは私たちが設備のプログラムを作るとき、異常回路にこのアナンシェータを使うと便利ということになります。

通常の内部リレーのデバイス記号は「M」ですが、アナンシェータは「F」となります。「F0」や「F5」のように指定できます。コイルとして使うこともできますし、接点としても使うことができます。内部リレー「M」と同じように使うことができます。

アナンシェータをON すると,特殊リレー(SM62)がONし,特殊レジスタ(SD62 ~ 79)にONしたアナンシェータの個数と番号が格納されます。

•特殊リレー : SM62 ・・・・・ アナンシェータが1 つでもON するとON します。
• 特殊レジスタ: SD62 ・・・・・ 最初にON したアナンシェータ番号を格納します。
         SD63 ・・・・・ ON しているアナンシェータの個数を格納します。
         SD64 ~ 79 ・・・ON した順にアナンシェータ番号を格納します。
(SD62 とSD64 は同一アナンシェータ番号が格納されます。)

例えばアナンシェータ「F50」、「F25」、「F1023」と順番にONしていくと特殊リレーは次のような動作となります。

最初に「F50」がONした時点で「SD62」にはアナンシェータのデバイス番号”50”はが入ります。そしてアナンシェータの「F50」が1つだけONしているので「SD63」には”1”が入ります。

「F50」がONした状態で次に「F25」がONすると「SD62」の値は25になります。アナンシェータは2つONしているので「SD63」は”2”となります。

「SD64」~はONしたアナンシェータの番号が入っていきます。図のように新しい番号がONするたびに、下に追加されていきます。つまり「SD62」と「SD64」は同じ値になります。

アナンシェータがOFFすると次のような動きになります。「F50」、「F25」、「F1023」と順番にONして「F25」がOFFした時の動きです。

「F50」、「F25」、「F1023」と順番にONした状態では「SD65」には「F25」の”25”が入っていました。そこから「F25」がOFFすることで「SD65」内の”25”は削除され、「SD66」以降のデータがシフトされてきます。この「SD62」~のデータはPLC側が処理してくれるため、ユーザー側でデータをシフトしているわけではありません。自動で行ってくれいます。

アナンシェータ「F25」をOFFしましたが、古い番号からOFFする命令もあります。[LEDR]という命令を使えば最初にONしたアナンシェータから順番にOFFしていきます。 異常内容を7セグLED等で表示していて、異常内容が1個しか表示できない場合、異常リセットで一括でクリアするのではなく、1ずつクリアすることで何の異常が発生しているか確認することが可能です。

「F50」、「F25」、「F1023」と順番にONした状態で、[LEDR]を実行すると、「F50」がOFFします。再度[LEDR]を実行すると「F25」がOFFします。

命令は単純に命令だけを実行する形になります。デバイスなどは指定する必要はありません。

こんな感じで異常処理を行うための便利な機能がアナンシェータで使えます。ただしこの機能は異常内容の表示を7セグLED等で行って、複数の異常が同時に表示できない場合などに便利な機能です。異常リセットで異常を一括で解除されると、複数の異常が発生している場合、表示されている異常以外は分かりません。異常を1つずつ解除することで、どのような異常が発生したのか確認することができます。

近年の設備ではタッチパネルがよく使われます。タッチパネルであれば複数の異常が発生しても、複数の異常を画面上に表示できるため、すべての異常が確認できます。そのため異常リセットでわざわざ1つずつ異常を解除していく必要はありません。複数の異常を確認したら、まとめて一括で解除すればいいのでアナンシェータの機能を使う必要がありません。

ただ、せっかく異常処理用にアナンシェータというデバイスが用意されているので、異常回路に使用できます。普通の内部リレー「M」と同じように使用できるので、各異常に対して「F」のデバイスを使えば、分かりやすいです。この場合「SD」などの特殊デバイスの値は無視して、単純に異常回路にアナンシェータ「F」を使う感じです。内部リレー「M」で異常回路を作る時は、デバイス番号の何番から異常に使用するなどの取り決めが必要ですが、アナンシェータ「F」を使えば、「F」自体を異常回路に使用するだけです。

アナンシェータの注意点

アナンシェータについて解説をしてきました。アナンシェータを使うと特殊レジスタにアナンシェータの動作状況が入ってくることも解説しました。ただしアナンシェータを普通の内部リレー「M」のように、単純にコイルとしてON/OFFしているだけでは特殊レジスタに値が入ってきません。(もちろん特殊デバイスを使用しないのであれば普通にコイルとして使っても大丈夫です。)

アナンシェータの機能を使うときは、アナンシェータ「F」をコイルとして使うのではなく、ONするときは[SET]命令。OFFするときは[RST]でON/OFFする必要があります。そのため単純にアナンシェータ「F」を異常回路に使用すると、「SM62」はONするのですが、一度ONしてしまうとアナンシェータ「F」を[RST]命令でOFFしない限りON状態を維持してしまいます。その時CPU正面の「USER」というランプも点灯した状態となります。一度異常を出すと、電源を遮断するまでCPU正面の「USER」ランプが点灯してしまうということです。

そこで「USER」ランプが点灯したとき、消灯させる回路を紹介しておきます。

アナンシェータ「F」を使ってCPU正面の「USER」が点灯している時は特殊リレーの「SM62」もONしています。つまり異常が発生してないのに「SM62」がONしてれば「F0」~異常に使用しているアナンシェータ「F」をまとめてリセットします。RST命令であれば正面の「USER」ランプを消すことができるので、ブロック命令でまとめてリセットすれば完成です。



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