シーケンス制御講座

自己保持の優先度

シーケンス制御講座 中級編 自己保持の優先度

自己保持の優先度というのは、自己保持ONと解除の接点が同時に動作したとき、自己保持をさせるのかさせないのか、優先順位をつける書き方です。

作成日:2023年02月20日
更新日:2023年02月20日


自己保持の優先度

ラダー図での自己保持は、自己保持を動作させる接点、例えば押しボタンスイッチなどを押すと自己保持状態となりコイルはONします。その後押しボタンをはなしても自己保持によりコイルはONした状態を維持します。一度スイッチを押せば、その後は押し続ける必要はなくON状態を保持してくれます。これが自己保持です。

これが自己保持の形となります。この状態で「X0」をONすると・・・。

「M0」のコイルがONし、「M0」の接点もONします。

この状態では「X0」をOFFしても「M0」は自分の接点でON状態を維持します。

一度自己保持状態になると、押しボタンなどをはなしてもON状態を保持し続けますが、解除する方法もあります。これはコイルに流れる電流、または信号を遮断すれば解除できます。

このようにコイルに流れる信号を遮断すると・・・。

自己保持は解除できます。

例えば自己保持をONするスイッチと解除するスイッチがあるとします。通常であればどちらかのスイッチを押して自己保持状態にしたり解除したりします。通常であればです。通常じゃあない場合というのはどういう場合でしょうか?それは自己保持をONするスイッチと解除するスイッチを同時に押すという場合です。

「そんなイレギュラーな状況までは考えない!」という意見もあるかもしれません。ですがこのようなイレギュラーな操作にバグが潜んでいます。イレギュラーな操作を行った場合、より安全な方向へ制御する。自己保持のONスイッチと解除スイッチを同時に押したとき、自己保持をONさせる方がいいのか?解除させる方がいいのか?それぞれの書き方と、どのような状況で使い分けるのかを解説していきます。

解除優先の自己保持

解除優先の書き方というのは、自己保持をONする信号と解除する信号が同時にONしたとき、自己保持を解除するという書き方です。実は私が動画やこのサイト内でよく使用している自己保持の書き方が解除優先の書き方となります。

「X0」が自己保持ON。「X1」が自己保持解除のスイッチとすると、自己保持解除の「X1」のb接点をコイルの前に書きます。「X1」のスイッチをONすると、「M0」のコイルに流れる信号を直接遮断するように書きます。こうすることで「X0」と「X1」が同時にONすると、自己保持は解除する方向に制御されます。つまり「M0」はONしません。

普通に歩進動作を書くときなども、解除優先の書き方で書いてください。この場合、解除優先というよりも行程優先になります。前のコイルがONしていないと次のコイルがONしない。センサーなどの条件よりも順番にONさせることを優先している書き方です。

ON優先の自己保持

ON優先の自己保持というのは、自己保持ONの信号と解除の信号が同時にONしたら、自己保持をONさせる方向に制御する書き方です。

このように自己保持解除の接点「X1」を自己保持の接点「M0」の隣に書きます。この自己保持解除「X1」の接点で遮断するのは「M0」の接点です。自己保持のコイルを遮断するのではなく、自己保持させている接点側を遮断します。

この位置に自己保持解除接点を入れても、普通に自己保持はかかります。「X0」の自己保持ONスイッチと「X1」の自己保持解除スイッチを交互に押せば、自己保持のOFF優先とON優先の書き方では同じ動きをします。違うのは「X0」と「X1」を同時に押したときの動作が変わってきます。ON優先の書き方ではコイル事態を遮断しないので、自己保持ONスイッチの「X0」がONすれば「M0」はONします。つまり「X0」と「X1」を同時にONすると「M0」はONします。これがON優先の書き方です。

ではこのON優先の書き方はいつ使うのでしょうか?使う用途があったほうが覚えやすいと思います。これは異常回路などに使います。

異常回路は一般的に異常が発生したら、その異常に自己保持をかけて”異常リセット”などのボタンで解除します。上記のように異常リセットは自己保持用の接点「M20」の隣に書きます。こうすることで「M10」の非常停止異常が発生している限りは異常状態になります。もしこの異常をOFF優先の書き方で書くと次のようになります。

このように書くと、異常リセットボタンを押し続けている限りは異常が発生しません。異常が発生しても異常となりません。もし「M10」が非常停止ボタンなどだと、異常リセットボタンを押している限り非常停止もできません。大変危険です。

このように自己保持でもOFF優先とON優先の書き方があります。状況に応じて使い分けてください。基本的には異常などの発生することが優先の部分にON優先の書き方、その他はOFF優先の書き方で大丈夫です。



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